雨が降った日
「雨が降った日」
アメアメ フレフレ・・・
レンガ色のカッパに 赤い長靴
ゴム製のそれらは ランドセルにも増して
七歳のわたしには 重かった
いまなら わずかな時間で
たどりつくであろう 母の待つ我が家
田んぼに囲まれた 田舎の一本道は
雨と風に 弄(なぶ)られながら歩く 幼子には
涙さえ浮かびそうに 不安だった
蛙もいた
長くて太いミミズもいた
道を挟んだ
川と田んぼの水量(みずかさ)が 増せば
道端の草が 水にたなびくように
蛇などが ユラユラ動いていたりした
大きな歳の子が 手をひいてくれた
握り合った手は 雨に打たれ
ボトボトに濡れて すぐに
ひどく 冷たくなっていった
こんな想い出が
この頃の わたしの胸を
じんわりと 温めてくれる
人の声も 滋味に溢れ
手の温もりが 素直に
言葉を伝えた時代の話だ。 by 富塚たぬき
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